ガイドブック関連イベント報告



2024/01/31更新


2023/12/26:アフターイベント

2023年12月26日、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館主催による「ファーストステップガイド」懇談会が開催されました。本イベントは、演劇博物館が令和4年度より文化庁「大学における文化芸術推進事業」の助成を受け実施した「舞台公演記録のアーカイブ化のためのモデル形成事業(通称:ドーナツ・プロジェクト)」の本年度の連続講座のアフターイベントとして企画されました。本稿では、イベント当日の様子をご紹介します。

参加者のみなさんには事前に「ファーストステップガイド」に可能な範囲で目を通してきてもらい、それを手がかりとして日頃のアーカイブ活動の疑問や不安をざっくばらんに話していただきつつ、「ファーストステップガイド」を使ってアーカイブ活動への一歩を踏み出すモチベーションに繋げていただくことを願い開催されました。それと同時に、「ファーストステップガイド」に対する率直な感想や普及のアイデアなどを出してもらい、それをエンパク側が吸収してこの先の内容のブラッシュアップに繋げていくことも目指されました。

当日は 9名の参加者と4名の関係者が会に集いました。参加者の多くは連続講座の受講生でしたが、中には「ガイドブック」と「ファーストステップガイド」に関心をお寄せ下さりイベントにご参加くださった方もいらっしゃいました。

会場ではお菓子やお茶を皆さまに提供し、終始和やかな雰囲気の中、会は進行していきました。

本事業の立ち上げから中心的な役割を担う岡室美奈子先生が司会となり、イベントの最初では参加者の方おひとりおひとりに、アーカイブ活動との関わりなどについて自己紹介をしていただきました。アイスブレイクとして雑談の時間を挟んだ後は全体に輪を広げ、エンパク側からいくつかのトピックを提示し、みなさんにお話しをいただきました。

最初の話題である「ファーストステップガイド」に対する感想では、冊子の中でセリフ調で書かれたアーカイブ活動への不安の声や、アーカイブするメリットについて書かれた序盤のページのわかりやすさについての好評が聞かれたほか、人によって使い慣れないツールや概念について書かれている箇所は個別の具体例を用いることによりわかりやすくなるのではといった意見も出ました。またこの日は様々な年代の参加者にお集りいただけたことから、世代間で「残す」ことの感覚に差があるのではといった話題も展開され、デジタルネイティブにとってのアーカイブという観点にも話が及んだほか、まだ日本では事例の少ない舞台芸術アーカイブの教育利用の可能性やアーカイブ教育の必要性にも話が広がりました。

次の、「ファーストステップガイド」を今後どのようにすればより良いものとできるか、いかに波及させることができるか、という話題では、劇場などの横のつながりを通じて簡易版のリーフレットを織り込むアイデアが出たほか、ファーストステップガイドおよびガイドブックをハブにワークショップやイベントを開催することで、公開されたあとも持続的に波及させられるのではないか、といった意見も出ました。

最後に提示された、アーカイブ活動をより身近に感じてもらえる言い方はないだろうか、という問いかけに対しては、「後世へのタイムカプセル」など、未来に繋いでいくものというイメージが多くの参加者から語られました。また、業務の引き継ぎを可能にする現実的な側面もあるという発言から、アーカイブが今日と明日、人と人など、それがなければ断片的になってしまう事を繋ぐものであるという話が終盤に展開され、それぞれの中にあるアーカイブ観が見つめなおされるような時間となりました。

当初予定されていた時間をオーバーしつつ会場の皆さんの積極的なご参加で、盛況のうちに会を終えることができました。